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Special Interview: 第2回「時代劇オブ・ザ・ワールド」

第2回「時代劇オブ・ザ・ワールド」

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松島 さて、いよいよ実際に映画祭が始まって、具体的に動かしていくことになるわけですけど、
映画の選定はいつもどうしてらっしゃるんですか?

高橋 毎回議論になるのはどこまでを時代劇・歴史劇と呼ぶか?っていう、
いわゆる「時代劇・歴史劇の基準」ですよね。

松島 ああ、そうか。

高橋 いくつかあるんですけど、まずは年代です。

松島 どの時代までを「歴史」とするか?ということですね。

高橋 そうなんです。歴史、とくに近現代史はイコール政治史にもなってきますから、
とくに第二次世界大戦以降となってくると、もうこれは明らかに政治なんですよ。
歴史映画が政治の面だけで語られちゃうのはとても残念なので、そこのギリギリの
線まで現代に近づけたいということで、いま1930年代までというのがひとつ基準
ということにはなっています。

松島 1930年代が基準となっている理由はなにかあるんですか?

高橋 じつは30年代にまで踏み込んだのも今年が最初なんです。当然のこととして国ごとに歴史は
進み方が違うんですよね。だから難しいんですけど、大きくは第一次大戦が終わってから
第二次大戦がはじまるまでのあいだで、だいたい中産階級が欧米先進国で形成されてくるんです。
だからそれより前というか、階級社会が歴然とあるほうがドラマとしては面白いのかな
というのはありますよね。

キートンのセブンチャンス (c) 表記不要

松島 それで思ったのは、1930年代をリアルに経験している人って、1920年には生まれてないと
いけないから、いまだとだいたいもう100歳近い。ほとんどはすでに亡くなられてますよね?
つまりそれが基準なのかなって思いました。その時代をリアルに観た人がいない時代は
歴史だと言ってしまっていい。

高橋 ぼく自身はそういう考え方はしてなかったんですけど、そういえばそうですよね。

松島 第二次世界大戦もいわゆる「歴史」になればもうすこし冷静に語り合えるかもしれない。

高橋 どうでしょうね。でも、そうなってほしいです。

松島 記者会見で高橋さんは「時代劇の概念を広げたい」というお話されていましたよね?

高橋 ええ。

松島 「るろうに剣心」にしても世間的には時代劇としては捉えられていないですけど、
考えてみたら時代劇。ジャッキーチェンの「酔拳2」も史実をベースにしている
という意味では歴史劇です。

高橋 いままでそういうくくり方ってなかったわけですからね。今回も衣川さんが290本もの映画を
リストアップしてくれたんですけど、データベースから引っ張る時に抽出する言葉として
「Historical film」とか「Epic film」とかあるんだけど、だいたいそれだけでいったら
イランイラク戦争とかあのへんまで入ってきちゃうんです。

松島 ああ、そうか。

高橋 ぼくらがやっている区切りとかとは根本的に違うわけです。もっといえば「フォーシーズンズ
誕生秘話」とかそういう映画もEpic filmになっちゃうんですよ。

松島 「ジャージーボーイズ」も。

高橋 だから去年、香港国際映画祭っていうアジアの映画祭でそれなりに尊敬される映画祭ですけど、
そこのディレクターのロジャー・ガルシアさんに個人的につながりのあるスタッフがいたんで
その人を通じて聞いてみたんです。こういう歴史ものの映画だけを集めて上映しようという
われわれの取り組みについて。

松島 実際どうなんだコレと?

高橋 ええ。そうしたら「わたしに聞いてもわかるわけないだろ」って言うんです(笑)。

松島 アハハハ

高橋 「世界中でこんなことやっているのはお前らだけだから」だって。

(一同爆笑)

高橋 「こういうやり方で世界中の映画をソートしているっていうのは君たちだけだから
それは自信持ってやりなさい」と。

松島 励まされちゃった。

高橋 まあ、それはそうだよなと。

松島 すごくいい話だなあ。

高橋 でも考えてみたら実際に、世界中にたくさんの映画祭があって、たとえば西部劇とか
ジャンルとしてやっている映画祭はあるにはあるんだけど、世界中の歴史劇だけ
というのはぼくらだけ。

松島 それはけっこうすごいことですよね。本当に大切な仕事だと思います。

高橋 だから今年の新作の歴史映画の知識に関していえば、ぼくと衣川さんが世界で
一番と二番なんです。

(一同爆笑)

松島 世界ナンバーワンとナンバーツーを迎えてのインタビュー。

高橋 超豪華ゲストですよ(笑)。

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松島 過去にもないし、世界中見渡してもいままでなかったものを作っているわけですからね。

高橋 そう。日本のいわゆる時代劇とアメリカの西部劇というのが、かろうじてジャンルとして
成立している歴史映画なんですけど、これはじつはすごく稀なケースで、とくに日本の時代劇
というのはたいへん世界的に見ても貴重なジャンル。海外では歴史劇というのはひとつの
まとまったジャンルとしては成立していないんですよね。

松島 世界に類のない映画ジャンルがなぜ日本で生まれて、しかも隆盛を極めていったのかというのは
すごく興味あるテーマですよね。黒澤明にも時代劇作品がありますし、とくにヴェネツィア国際
映画祭で銀獅子賞を受賞した溝口健二の「雨月物語」は大映の京都撮影所で制作されています。

高橋 そう。だから日本の時代劇だけを掘り下げていってもかなりおもしろいものにはなると思うんです。
ただそれは国内ではけっこうやりきった感はあって。京都国際映画祭のほうでもこれまで
いろいろとやってこられたわけですし、京都文化博物館の普段の上映活動なんかも時代劇に
フォーカスしているものが多いですからね。

松島 そういう意味でも、京都ヒストリカ国際映画祭っていうのはものすごい可能性を
もっているんだなあとあらためて理解しました。

高橋 世界の歴史映画っていうところが大切なポイントなんですね。

松島 時代劇オブ・ザ・ワールドだ。

高橋 歴史はどの国にもありますから。

松島 そして映画もほとんどの国にある。

高橋 そういうことです。

松島 そういう意味で、京都ヒストリカ国際映画祭については、歴史映画祭としての個性が
クローズアップされがちなんですけど、個人的には「国際映画祭」としての部分が
きちんとカバーされているのがいいなあとずっと思っていたんです。

高橋 国内に閉じてないですからね。

松島 そこがまさにENJOY KYOTOとして興味をもったところでした。

(つづく)