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Special Interview: 第5回「貴重なフィルムと奇妙な作品」

第5回「貴重なフィルムと奇妙な作品」

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松島 「ヒストリカフォーカス」というカテゴリの映画には
個人的に楽しみな作品が多くあります。

高橋 「ヒストリカフォーカス」の狙いとしてはまずはチャンバラを
やりたいと思っていて、それで今回たまたま「るろうに剣心」の
アクション監督である谷垣健治さんに協力いただけることに
なったんです。

人斬り (c) フジテレビ/勝プロ
(c)フジテレビ/勝プロ

 

松島 これはどういうものなんですか?

高橋 谷垣さんが自分の映画のアクションを考えるのに参考にした
作品とか日本刀のアクションでこれは!というのがあれば
出してくださいってお願いしたら、30本くらい作品を出して
きてくれて、そのなかから選びました。バスター・キートンあり、
伊藤大輔あり、勝新太郎あり、ジャッキーチェンあり。

松島 ジャッキーチェン(笑)。

suiken
Drunken Master Ⅱ (c) 1994 Epic Enterprises Limited. Package Design
(c) 2007Warner Bros. Entertainment Inc.Distributed by Warner Home Video. All rights reserved.

 

高橋 谷垣さんはノートパソコンに自分たちのアクションコンテや
参考にしてる古い映像なんかがアーカイブ的にいっぱい入ってて、
それを観ながら彼はアクションシーンを作っていくんです。

松島 今っぽい感じですね。

高橋 だから今回そのアーカイブの一部をお客さんに味わっていただけます。

松島 そうかいまはそういう過去のコンテンツをアーカイブしやすいし、
そのなかからインスパイアされてみたいな、そういう編集のような
感覚でつくりやすい時代になっているというのもあるのかな。

高橋 このシーンの回し蹴りはじつはあの映画のあのシーンから引用したとか、
そういう話なんです。でもなかなか聞いただけでわかる人というのは少ないですけど。

松島 それはそうでしょうね。

高橋 それをきちんと映像を見ながらお話してらえるのでわかりやすいし
おもしろいですよ。これができる人はなかなか日本にいないんで、
これを見られるっていうのはなかなか幸せだと思いますよ。

松島 音楽のリミックスみたいな感覚ですよね。

高橋 アクションはそういうことができるからね。

松島 ぼくはとくに「伊藤大輔初期チャンバラ集」が楽しみなんです。

高橋 これはそれぞれの作品の断片を集めたプログラムになるんですけど、
その映像を持ってきていただくのが牧由尚さんっていうゲームの
監督さんでAKB48がゾンビになってそれをバンバン撃っていくっていう
そういうアーケードゲームとかを監督している方なんですけど…

伊藤大輔初期チャンバラ集 (c) 表記不要

松島 すごい内容のゲームですね(笑)

高橋 で、その方がじつは伊藤大輔のコレクターなわけ。つまりおそらく
そこまで伊藤大輔が影響を及ぼしているんだと思うんですよ。
ゲームのアクションのアイデアにまで影響を及ぼしているっていう。

松島 伊藤大輔さんっていうのはどの時代に活躍された人なんですか?

高橋 1920年代から30年代のサイレント期じゃないですかね。

松島 そういう時代のそういう人の影響をゲームの監督が受けている
っていうのはすごい豊かな感じがしますよね。

高橋 「るろうに剣心」の谷垣さんが伊藤大輔の「新版 大岡政談」を
引用することになったきっかけもおそらくyoutubeからだと思うんですよ。

松島 「るろうに剣心」のアクションにバスターキートンの動きを
取り入れているのと同じように、じつは伊藤大輔のチャンバラ
アクションがどこかの海外の映画作家のヒントになっていても
ぜんぜん不思議じゃない時代ですよね。

高橋 そこがじつにおもしろいところなんです。

松島 あとひとつ「ヒストリカワールド」というカテゴリでは世界の
歴史映画の中からとりわけ現代性とエンターテインメント性の高い
作品が選ばれているということですね?

高橋 ええ、そのとおりです。松島さんが気になっている作品はありますか?

松島 やっぱ珍品と名高い「トワイライト・フォレスト」ですよね。

twilight

高橋 これもかなりの問題作です(笑)

松島 はははは、観たいなあ。

高橋 これはねえ、ほんとに大議論になりましたからね(苦笑)

松島 その一端を教えていただいてもいいですか?

高橋 あの監督、すごく物語を語りたい欲望が強いんだと思うんです。
でもそこに変な癖があってね。とにかく全体の構成をあまり
考えすに、言いたいことがあとからあとから出てきちゃうタイプ
なのかなあと思います。

松島 まくしたてちゃう。

高橋 まあ結局はマニアなんですよ。そういうところでぼくと似た
感じがしちゃうんで。ついつい。へたくそだなあと思うところも
あるんだけどキライになれない。

松島 スペイン映画ですよね?

高橋 そうそう。お話自体はスペインの30年代のフランコ政権と
市民戦線の戦いの田舎の農村の風景なんですけど、淡々とした農村の
日常から始まって戦争に巻き込まれて大変なんだろうなあって思ってると、
突然ぜんぜん違う展開になっていくっていう。

松島 アハハハ

高橋 えーっ!まさか!っちゅうねえ。

松島 観たいなあ。

高橋 (資料の写真を指差しながら)だってもうこの緑色の光線が
不気味でしょう(笑)

松島 ねえ(笑)。この写真の雰囲気とスペイン内戦がまったく
結びつかないですよね(笑)

高橋 そっから先はもうね、見てもらうしかないんですけど(笑)

松島 これぼく個人的にはいちばん興味あるんですよ。

高橋 まさかっていうのがね、出てくるんですよ。

衣川 そのへんのことがわかる大事な絵はこれウェブサイトでも
見せてないんです(笑)

高橋 そうそう。

衣川 スチールで一応あるんですけど、これは見せない方が
いいんじゃないかって高橋さんもおっしゃってて。

高橋 審査会でも見終わった後に、セレクト委員会の皆さんで
大変議論になりました。

衣川 ざわめきましたよね。

高橋 「これはダメだろう」と(笑)

一同爆笑

高橋 たいへん強固に擁護する人と、強固に否定する人とがね。

松島 分かれたんだ。

高橋 際立って分かれちゃいましたよね。

松島 まあ、そうなんだろうなあ。

高橋 でもね、多くを語りたいっていう彼の欲望のかわいらしさに
ついほだされてっていうかね。

松島 わかる気がします。すごく。

高橋 まあダメだって言われたらもうしょうがないと。
でも勘弁してやってよっていうね、まあそういう映画ですよ。

松島 いやあそうゆう映画、大好きだから、ぼく。

高橋 ホントこの映画こそね、うちでしかかからない!

一同大爆笑

高橋 世界広しといえども、映画祭でこれを流すところってないと思うんですよ。

松島 そこまで言われると、この監督のオスカルさんにぜひ
映画祭の会場に来てほしかったですよね。

高橋 そう。この人がなにを考えてるかっていうのはね本当に知りたいんですよ。

衣川 過去の作品で「ブラックコメディSFウエスタン」とか作ってますからね。

一同大爆笑

松島「アトラデロ」っていう作品ですね。

高橋 なんなんだこれっていうね。誰にも理解されてないだろうっていう。

松島 アハハハ

高橋 (写真を指さしながら)この沈鬱な顔!もう誰にも理解されていない
悲しさがにじみ出てますよね。

松島 個人的にはぼくこれイチ押しですね。

高橋 ぜひ見てください(笑)

(つづく)