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Special Interview: 第6回「ずっと観ていたくなる絵の魅力」

第6回「ずっと観ていたくなる絵の魅力」

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松島 そのほか目立った作品でいうと、やはり「ベル ある伯爵令嬢の恋」ですかね。

高橋 「ベル」はイギリス映画なんですがフォックスサーチライトが
世に問うというとっても重厚なエンターテイメント作品なんですね。

松島 「トワイライトフォレスト」とはあきらかに趣が違いますよね(笑)。

高橋 恋愛あり、親子の情あり、それを阻む階級社会や偏見があり
っていうなかで戦っていく女性の選択という物語です。
描き方もカタルシスがあるし、映画としてたいへんすばらしい作品です。

松島 どういう映画なんですか?

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2015年6月DVDリリース(予定)
(c)2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 

 

高橋 舞台は18世紀のイギリス。海軍士官のリンジー卿が黒人奴隷の
女性とのあいだにもうけた娘ベルの人生を描いています。

松島 当時の英国だと階級社会ですし、貴族のなかに黒人奴隷の女性となると、
やはり差別や偏見はあったでしょうね。

高橋 そうですね。この写真の黒人女性と並んでいる白人女性はいとこ同士
なんですがベルの存在はずっと隠されてきました。

松島 やっぱり。

高橋 でもふたりを描いた肖像画が2007年に発見されて「この黒人の
女性は誰?」というところからベルの存在が明らかになります。
そしてイギリスの奴隷貿易廃止条例がこういうところから出てきた
ことがわかってきたんです。そういうところから始まる映画なんです。
またこの映画を解説いただく堀越ゆきさんなんですけど、
堀越さんはたまたま去年「ある奴隷少女に起こった出来事」
っていう本を翻訳されて去年の文芸書大賞を受賞されています。

松島 テーマとして「ベル」との共通点がある小説なんですね。

高橋 そういう意味で「奴隷の血を引いた女性の生き方」という点で
共通するところがあります。しかも両方ともいまの時代にも
ちゃんと届く強い物語性がある。
これは150年前に書かれた小説なんですけどいま文芸書の中で
アメリカでベストセラーになっている小説でして。

松島 その本は150年前に出版されたものをいま翻訳されたって
いうことなんですか?

高橋 いや、それがまた不思議な縁があって、堀越さんが翻訳された
その本も最近発掘された小説なんですね。大昔に書かれたんですけど、
表に出てきたのは最近なんで、堀越さんの本も、それから映画「ベル」も
いわば「発見された歴史」という共通点があるんですね。

松島 「発見された歴史」ですか。

衣川 「ベル」はもともとはイギリス映画なんですけど最初に
アメリカで上映したみたいで、最初は5館くらいだったのが
500何館までどんどん増えて。

高橋 一週ごとに口コミでバアーって増えていったっていう作品。

松島 それだけやっぱり惹きつけるなにかがあったんでしょうね。

衣川 まあ日本だととくに黒人の人種問題っていうのはなかなか
馴染みがないのでね。

松島 劇場上映されないんですよね。

衣川 そこをまあ堀越さんが現代の女性にも置き換えた切り口で
解説していただくというか。

高橋 堀越さんは外資系のコンサルティングに勤めているバリバリの
キャリアウーマンで。

衣川 アメリカやプラハで育ってて、最年少で外務省に。

松島 すごい方なんですね。

高橋 もうビビっちゃって(笑)

松島 ははは

高橋 そういうキャリアの堀越さんがね、グローバル資本主義自体も、
現代の奴隷制度だっていうんです。そういうグローバル資本主義の
果てに選択肢のない人生を選ばざるを得ないいまの現実を
どう生きるのか?っていう問いを、とくに女性に投げかけたいと
仰っていました。

松島 現代の女性の問題でもあると。

高橋 とりわけ多くの女性に見てほしい映画ですね。

 

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(c)THE MATCH FACTORY GmbH

 

 

松島 それと「黄金」は好きな感じの映画だなあっと思って見ていたんです。

高橋 絵がね、とにかく強いんです。ずーっと惹きつけられて
観てしまう絵なんですよね。

松島 予告を見て絵の強さはすごく感じました。

高橋 物語をいろんなアクションが動かしていくんですけど
ずっとそれを虎視してしまうんです。「こいついったい
何だろうなあ?」っていう興味が最後まで続いていく。

松島 それはストーリーの魅力でもなく、役者の演技でもないと?

高橋 もちろんストーリーも役者もそれぞれ魅力的ではあるんですけど、
やはり圧倒的に絵の力だと思いますね。

松島 この監督さんは実績のある方なんですよね?

高橋 そうなんです。ぼくも正直知らなかったんですけど
「ベルリン派」っていうムーブメントがありまして、
それ自体がいわゆる2000年代に起きている
たいへんニュースでかつ映画史的な事件らしいんです。

松島 知らなかったです。

高橋 かつて「ニュージャーマンシネマ」っていう流れがひとつ
ありましたけど、そのジュニア世代だと思います。リアルな
現実と映画を結びつけた動きなんだと思うんですけどね。

松島 ドイツの映画にも独自の匂いがありますよね。

高橋 今回はドイツ映画というよりは、監督自身のチャレンジ
という気がしています。歴史ものでしかも海外を舞台に
撮るのは今作が初めてなので、監督自身にとっておそらく
チャレンジングな作品だったんだろうと思いますね。

松島 ベルリン国際映画祭でもプレミア上映されていますもんね。

高橋 とにかくこの女性がクールでね。まあこれは観てください
としか言いようがないんですけど。

松島 表現が難しい映画ですよね。

高橋 うん。なにに似てるっていうものでもないんですけどね。
なんていうんだろうなあ。もうとにかく淡々と。
それでいてたいへん緊張感のある映画なんですよ。

松島 カナダのゴールドラッシュの時代に金鉱を探して
旅する人たちの話しですよね。

高橋 そうです。

松島 ひとりひとり順番に脱落していく。それをことさら
ドラマティックに描くわけでなく。

高橋 じつはそれがドラマではあるんだけどね。あえてわざわざ
大げさに演出しないということですよね。

松島 映画の魅力のひとつとして「見ていたい絵」っていうのかな、
絵そのものをずっと見ていたい映画ってありますよね。

高橋 そういう意味では今回の作品はそれぞれみんな絵の強い
映画ばかりだと思います。

松島 絵そのものの力ですよね。

高橋 そう。突飛な演出をしたり、奇妙なキャラクターを
置いたりとかじゃなく。

松島 奇をてらわない映画。

高橋 絵に対してストイックな映画ばかりですよね。

松島 楽しみだなあ。

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(つづく)