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Special Interview: 第7回「ボーダーを超えていく映画の魔力」

第7回「ボーダーを超えていく映画の魔力」

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高橋 この「ガイド」という映画はウクライナ映画なんですけど1930年代の
ソビエト・ウクライナが舞台なんで、じつに政治的な映画なんですよね。

松島 まあいまはとくに時期的にもそうですよね。

高橋 でもいろんな観点から語れるいい映画ではあるんです。
ウクライナ映画のなかではおそらくかなり世界マーケットを
狙って作られている映画だと思います。

松島 へえ。

高橋 物語としては、この主人公のおじさんはもともと民族楽器って
いうのかなバラライカみたいな弦楽器を演奏している芸人
なんですけど、秘密警察に眼をつぶされちゃうんです。
で、このアメリカ人の少年が秘密警察から追われていくのを
いっしょに逃げてく旅なんですけどね。

guide
提供:Pronto Film

 

 

松島 この資料には「座頭市 血煙り街道」の影響が見て取れるって
書いてありますね(笑)

高橋 そうなんです(笑)。その「座頭市血煙り街道」っていう映画は、
ちょうど今回「ヒストリカフォーカス」で谷垣さんが選んで
くれていて、座頭市が子連れの旅をする映画なんです。それと
ホント良く似ています。

松島 そうなんですか?

高橋 盲目のハンデを馬鹿にしたヤツがひどい目にあったり、
少年をいじめるやつが来たらバーンとやっつけるとかね。
ほんとによく似ています。

松島 それは高橋さんがご覧になって、座頭市の影響が確実に
あると確信されたんですね?

高橋 ええ、この監督はもう間違いなく「座頭市」は見ていると
思いますよ。

松島 おもしろいですね。

高橋 こいつ本当は目が見えてるんじゃないか?って思わせる
シーンとかね。座頭市でもそうだったじゃないですか?
そのニュアンスとかもあったりしてね、おもしろいんですよ。
座頭市を観たうえで作ってるのは間違いないと思います。

松島 ウクライナで勝新太郎の座頭市っていうのもすごいなあ。

高橋 どこでも観れる時代ですからね。

松島 ところで実際にウクライナ映画っていうカテゴリーは存在して
いるんですか?ソ連映画としてクレジットされるんじゃなくて?

高橋 調べると「ウクライナ映画」の昔の人がいるんですね。
ソビエト連邦の中のウクライナ共和国ってことなんですよね。

松島 東欧でもルーマニアとかハンガリーとかの映画は見たことが
ありますけどウクライナ映画は観たことがないんでねえ。

高橋 そうですよね。なかなか日本で見る機会がない映画ですよね。

akusen
(c)2013 SEE MOVIE LIMITED

 

 

松島 次に「悪戦」なんですけど、記者発表で飯星景子さんは
「香港映画は欧米人から見てBL(ボーイズラブ)的に見える」
なんて語ってらっしゃいましたよね。

高橋 言ってましたね。新しい視点だなあと思います。

松島 なぜなんでしょうね?

高橋 「義兄弟」っていう感じがあるからじゃないですかね。
「死ぬときはお前と一緒だぜ」みたいな(笑)。

松島 ああ(笑)。

高橋 あの香港映画特有のメンタリティなんでしょうね。

松島 日本のヤクザ映画だったり、任侠ものにも近しいものは
ありますよね?

高橋 それでいうと日活アクションなんかもそうかな。

松島 ありますよね。

高橋 だからもしかしたら若い人があらためて見たら
そう見えるのかもしれないですね。

松島 そういう再評価のしかたがあってもいいかもしれないですね。

高橋 この「悪戦」も日活アクションぽいところもあるんですよ。

松島 へえ。

高橋 上海の華やかな夜の街なんかは、日活映画のあの横浜の
グランドキャバレーみたいなそんな雰囲気なんですよ。
いまにも二谷英明とか石原裕次郎がでてきそうな(笑)。

松島 そうか。日本のクラシックの名作って黒澤明や小津安二郎、
溝口健二はかならず名前が上がるんですけど、いわゆる
日活アクションとかね、エンターテインメント性の強い
作品の名作って大きくフィーチャーされることがないですよね。

高橋 素晴らしい作品が多いんですけどね。

松島 ケーブルでたまにやってるのを観てると、つい引き込まれて
しまって最後まで見てしまいます。

高橋 もう「赤いハンカチ」なんてね。すごくいいんですよ。
生涯のベストですよ。

松島 生涯の(笑)

高橋 舛田利雄さんなんてね、あの監督なんかは本当にすばらしい
監督なんですよ、やっぱり。

松島 日本が豊かな時代でしたからね、やっぱり映画も豊かですよね。

高橋 話しがずれちゃったんですけど「悪戦」はほんとにアクションが
速くて、すごいと思います。このスピード感あるアクションは
ちょっと見てほしいんですよね。

松島 サモハンキンポーが参加していますよね。

高橋 ええ。サモハンとユエン・ウーピンという二大武技監督を
武術指導に迎えてっていう豪華なスタッフも注目です。

松島 この監督はお若い方ですよね?

高橋 そうなんですよね。やっぱりこういう人が出てくるって
いうのもね、たいしたもんですよ香港映画は。

松島 そうですよね。

高橋 で、これじつは大悪は日本人なんですよ。日本人役。それを
中国人が演じているんで、台詞はほとんどないんです。
タランティーノの映画「KILL BILL」で「ヤッチマイナー!」
ってありましたよね?だいたいあんな感じです。

松島 なるほど。

高橋 だから日本で公開は出来ないんじゃないかなっていう気がしてて。
だからこそヒストリカで観てほしいなあと。

松島 これも時期的に微妙ですからね、いま。

高橋 であるがゆえに、本当はやるべきなんですけどね。

松島 わかります。

高橋 豊臣秀吉のころの話を描いた韓国映画とかね、すごいの
あったんですけど。

松島 実際の歴史解釈がどうかは別として、外国がどのように
自分たちの国を見ているのかっていうのを知っておくためには、
歴史映画というのは有効なツールだとは思いますね。

高橋 ええ。だから理想を言えば、いつかはそういう
レギュレーションを外して語り合えるニュートラルな場所が
持てたらいちばんいいんですけどね。

松島 ぼくENJOY KYOTOではよくグローバルというのは
世界中がひとつの価値観になることではなくて、
異文化と出会うことでローカルの良さを再認識することだと
いっているんです。

高橋 ああ、なるほど。

松島 異なる文化同士でも共通点はあるし、そこで手をつないだり
違いをむしろ楽しんだりできる環境がグローバル化だと
言ってるんです。お互いをリスペクトするっていう。

高橋 それは絶対そうだよね。

松島 そういうことを語り合うきっかけとして歴史映画って
すごく向いているというかフィットする気がするんですよね。

高橋 それは本当にそうで、京都ヒストリカ国際映画祭のひとつの
意義としてもそういうことはあると思っているんですよね。

(つづく)